event
岩間朝子 期間限定キオスク
cross-pollination
オープンのお知らせ
2024年12月14日(土) – 22日(日)
14:00-20:00 オープン
*14日のみ16:00-20:00
会期中無休
会場: HAGIWARA PROJECTS
135-0006 東京都江東区常盤1-13-6-1F
statement
数年ぶりに再会した岩間朝子さんに、ある日メッセージを送った。
画面越しに見るパレスチナの現状は、毎日の労働に翻弄されればすぐどこかに置き去りにしてしまいそうになっていた。けれどもSNSで目にする岩間さんの日々の実践が、そこを繋ぎとめていてくれたように思えたからだった。
2002年からドイツに暮らし、料理人としての顔をあわせ持つ岩間さんは、人間が食べること、食の生産や流通、土地の歴史、文化的背景などを多角的に捉え、日々の生活の中で実践と考察を重ねている。「自分で生きていく方法を模索するうちのひとつ」と語り、数年前に始めた養蜂、スリランカで農村集落調査をしていた父のアーカイブ整理を通じて考察する植民地主義の暴力。そして子供とともに参加している、イスラエルによるパレスチナ人への残虐行為に反対するデモ。
生活の中に散らばる個々の営みは、独立し切り離されたものではないということ。ささやかな振る舞いが自分や周囲だけでなく、見えない誰かの生につながる可能性を持っているということ。たくさんの気づきをもらいながら、岩間さんとはここ半年ほど定期的にオンラインでの対話を重ねてきた。
現在場所を持たないkrautraumは、2024年の終わりに清澄白河のHAGIWARA PROJECTSにて岩間さんをお迎えする。これまでの活動のアーカイブや、過去の作品から現在まで継続している関心事やリサーチの一部など、ドイツのスタジオから少しの間だけ日本に持ち帰ってきてもらうことをお願いした。岩間さんからの応答には豊かなアイデアがあふれていて、この9日間のことを一言で言い表すのは難しい。ただこれまでやってきたように、私的な空間に留まっていた思考が外に広がっていく先の結び目を作り、そこにいくつかの新しい対話が生まれる場所を見てみたいと思っている。
下山彩 (krautraum)
パレスチナで起こっていることに対し、何の手立ても見出せない日々が続いています。パレスチナだけではなく、レバノン、スーダン、そしてミャンマーと、次々に目の当たりにする理不尽な現実に憤りを感じながらも、今の生活をどのように少しずつシフトできるのかを手探りで模索する毎日です。「作品を作る」とは何か、今の私にできることは何なのかを探し続ける中で、krautraumの下山さんからのご提案を受け、このキオスクを開くことに至りました。
「cross-pollination」では、私が今できる「サービス」として、断片的な実践の場を共有します。たとえば、友人の映像作品に日本語字幕をつけることや、養蜂で採取した蜂蜜を販売し、その収益をガザの子供たちへの支援に充てること、ZINEを制作すること、あるいはデモに足を運ぶことなど、一つひとつは小さな行動ですが、それらが繋がることで少しでも世界に寄り添うような場を目指しています。
このキオスクは「ひとりひとりの日常の中での気づき」や「連帯(solidarity)」をテーマに、私を媒介にしてさまざまなエレメントが共鳴し合う場です。過去1年の制作や体験の断片、さらにはそれ以前の出来事が重なり、対話を通じて一つの場が形作られていきます。展示内容には、父のスリランカ研究アーカイブの整理や、初めて訪れたスリランカでのロードトリップの記録と写真、過去の作品や現在制作中の作品の一部も含まれます。また、共鳴を感じる友人アーティストの映像作品も上映し、異なる視点が交差する中で新たな連帯の可能性を共に考えていければと思います。
ベルリンでの思索や日々の活動の一端を、菩提樹のお茶を片手に皆さんと語り合える場としてお待ちしています。どうぞお立ち寄りください。
岩間朝子
プロフィール
ベルリン(ドイツ)と東京をベースに活動。 料理人/アーティストとしてのバックグラウンドをもつ岩間は、食べるという行為の社会的側面について共に考えるための実験的なワークショップやフィールド・トリップなどを行ってきた。最近の活動では、自然の諸要素と、身体の物質性あるいは主観性との関係の歴史的、技術的な変容を、型を取る、写す、採取するといった身体的関与を取り入れた制作を通じて考察を試みている。Studio Olafur Eliasson(ベルリン)併設の食堂 The Kitchen の立ち上げ・運営にコックとして携わり(2005-15年)、『The Kitchen』(2013年)を共同編集。Jan Van Eyck Academy(オランダ、マーストリヒト)にて滞在制作(2019-20)。展覧会に、Kunsthalle Bern(スイス)、Fifth Istanbul Design Biennial(イスタンブール)、ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW、東京都現代美術館(2020)、アーツ前橋(2017)、Den Frie Museum (コペンハーゲン)、 Haus der Kulturen Der Welt (ベルリン)、Museum of Contemporary Art Leipzig(ライプツィヒ)。